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|   GPSとは
GPSとは
   GPSとは何のことですか
 
GPSは、Global Positioning System という英語の頭文字を取った略語です。これは1970年代の後半に米国によって開発された人工衛星を使った新しい測位システムで、日本語では全地球測位システムと呼ばれています。GPS衛星は現在6つの軌道面上にそれぞれ4衛星づつと予備の5衛星の計29衛星が配置されています。各衛星は、それぞれ衛星の位置を表わす軌道情報や精密な時刻情報を発信しながら、地上約20200kmのほぼ円軌道をおよそ12時間で周回しています。この衛星配置の為、世界中どこにいても(Global)、常に4個以上のGPS衛星の電波を受信することができ、得られた軌道情報等から自分自身の位置を知る(Positioning)ことが出来るシステム(System)になっています。


 
 ◆ 現在GPSはどのように利用されていますか
 
GPSは本来、米国国防総省で飛行機や船舶が航行するための航行援助用として開発が行われたこともあり、軍用目的の利用が先行していましたが、1996年3月にクリントン大統領によって発表されたGPS政策でその民生利用が公的に保障され、民間での利用が大きく広がりました。日本ではGPSを利用したカーナビは、現在までに累計出荷台数が1000万台を超える程普及し、GPS機能付の携帯電話も歩行者ナビとして利用が始まっています。GPSと通信システムを組み合わせてタクシーや物流貨物等の運行管理に使う事も行われています。


 
 ◆ GPSの構成
 
GPSのシステムは3つの部分から構成され、各々宇宙部分(space segment)、地上管制部門(control segment)及び利用者部分(user segment)と呼ばれています。宇宙部分は一群のGPS衛星で、測位に必要な時刻信号や軌道情報を電波で常時地上に向けて送り出しています。地上管制部門では、GPS衛星を追跡してその軌道を計算するとともに、GPS衛星が送信すべき情報を地上から注入しています。利用者部門はユーザーの受信装置のことで、GPS衛星の電波を受信して測位が行われます。


 
 ◆ 衛星の構造について
 
GPS衛星は、地上管制局からの信号を受信するとともに、これに基づいて軌道情報、時刻信号等を地上に向けて送信しています。中心的な部分としては、これに必要な送受信装置及びアンテナを装備しています。また、安定した時刻信号と搬送波を供給する為には高精度の原子時計が必要です。現在運行しているブロックUシリーズの衛星では、セシウム原子時計とルビジウム原子時計がそれぞれ2個づつ搭載されています。さらにこれらの装置を連続して稼動させるため、電力の供給源として巨大な太陽電池パネルが衛星本体に取り付けられています。1989年から軌道に投入され始めたブロックUシリーズ(ブロックU、ブロックUA、ブロックUR)の衛星の重量、大きさ、設計寿命は次のとおりです。

 
重量kg
大きさ(幅×高さ)m
設計寿命(年)
電力(w)
 ブロックU
844
5.3×1.5
7.5
700
 ブロックUA
1816
5.3×3.4
7.5
800
 ブロックUR
2217
11.4×1.7
10
800
 


 
  衛星の打ち上げ方、現在稼働中の衛星について
 
最初のGPS衛星は、ブロックTと呼ばれ、1978年に打ち上げられました。ブロックTは1985年まで11回打ち上げられましたが、現在はすべて機能停止しています。1989年からは、ブロックTを改良したブロックU衛星の打ち上げが始まりました。これらの衛星はスペースシャトルまたはデルタUロケット軌道に投入されています。1990年からはさらにブロックUを改良したブロックUAが、また1997年からは通信機能を強化したブロックURの打ち上げが始まっています。現在稼働中のGPS衛星は29個で、下表にその打ち上げ年表が示されています。GPS衛星の運用状況については、米国沿岸警備隊のHP http://www.navcen.uscg.gov/gps/から得られます。

衛星番号
 
 
衛星番号
 
 
PRN
ブロック
打上年月日
PRN
ブロック
打上年月日
U
1989.06.10
UA
1993.10.26
17
U
1989.12.11
UA
1994.03.10
15
U
1990.10.01
UA
1996.03.28
23
U
1990.11.26
10
UA
1996.07.16
24
UA
1991.07.04
30
UA
1996.09.12
25
UA
1992.02.23
UR
1997.11.06
26
UA
1992.07.07
13
UR
1997.07.23
27
UA
1992.09.09
11
UR
1999.10.07
UA
1992.11.22
20
UR
2000.05.11
29
UA
1992.12.18
28
UR
2000.07.16
31
UA
1993.03.30
14
UR
2000.11.10
UA
1993.03.13
18
UR
2001.01.30
UA
1993.06.26
16
UR
2003.01.29
UA
1993.08.30
21
UR
2003.03.31
 


 
  地上管制局の役割
 
GPS衛星を追跡して衛星軌道を決定するとともに衛星を制御する為5つの追跡局(コロラドスブリングハウス、ハワイ、クワゼリン、アセンション、ディエゴガルシア)が設置されています。これらの局では衛星の軌道を決めるためセシウム原子時計を用いた2波長受信機を用いて常時GPS衛星の追跡観測が行われています。追跡局の位置はVLBIなどで高精度に決定されています。追跡局で観測したデータは、米国のコロラドスプリングスにある主管制局に送られます。ここでは追跡局からの観測データに基づいて、衛星の軌道情報及び、衛星の原子時計に対する補正量が計算されます。主管制局ではまた、衛星が初期の軌道から大きくずれたときそれを元にもどすことや、寿命の尽きた衛星と予備の衛星とを交換することなどを担当しています。5局のうち、アセンション、ディエゴガルシア及びクワゼリンの3局は放送局としての機能を有しており、新しい軌道情報や原子時計の補正量などの航法メッセージを衛星に注入します。


 
  衛星の発射する電波と信号について
 
GPS衛星からの電波の送信には二つの搬送波L1、L2が使われています。これらの搬送波は、受信機に衛星からの信号である衛星時刻を与えたり、軌道情報等の航法メッセージを伝えるために2進数の0と1の状態の続いたコードによって変調されています。コードが変化する毎に搬送波の位相が180度変わる変調方式がとられています。衛星時刻の読み取りのためにはC/AコードとPコードという擬似的な乱数列のコードが使われます。航法メッセージもコード化されて搬送波に載せられます。

搬送波
コード
 P C/A 航法メッセージ
 P  航法メッセージ
      


 
  軌道情報について
 

軌道情報とは、GPS測位において必要となるGPS衛星の位置を表わす情報です。大きく分けて概略暦(Almanac)、放送暦(Broadcast ephemeris)、精密暦(Precise ephemeris)の3種類があります。概略暦と放送暦は、GPS衛星から航法メッセージの一部として送信されています。概略暦の軌道位置精度は数kmと落ちますが、それぞれの衛星から全衛星の概略軌道を簡単に得ることが出来るため測位計画に必要なスカイプロット(観測点上空の衛星運行図)等を作るのに利用されます。放送暦は、追跡局の最新のデータで計算された軌道位置で2時間ごとに更新されており、その軌道精度は1〜2mです。精密暦は後処理で作られ、観測時には利用できませんが、その軌道精度は5cm〜20cmと放送暦に較べて高くなります。精密暦は色々な機関で作成されていますが、最も正確なものは、約2週間遅れで提供されている国際GPS事業(IGS)の精密暦です。
IGS:http://igscb.jpl.nasa.gov/



 
  放送暦の内容について
 
地球を回るGPS衛星の運動は第一近似では、地球を均質な球とみなしてニュートン力学を適用すると楕円運動になります。これはケプラー運動とよばれ、6つの軌道要素で表すことができます。しかし実際には、地球が球ではなく扁平な形をしていることとか月や太陽の引力等の影響を受けて、その楕円軌道の向きや形が時間とともに変化する動きをしています。放送暦には、GPS衛星の位置座標を決めるのに必要な軌道傾斜角、昇交点赤経、近地点引数、長半径、離心率、平均近点離角と呼ばれる軌道要素と楕円の形の時間変化を表す補正係数が含まれています。


 
  GPSを用いる測位方法
 

GPSの観測法は、単独の受信機が複数の受信機か、あるいは観測量がコードか位相か、あるいは測位結果が瞬時に得られるかどうかによって分けることができます。単独測位は1台の受信機でGPSの電波に付加されている符号(コード)を使用してアンテナと衛星との間で直接距離測定を行い、アンテナの座標を求めます。干渉測位は複数の受信機で同時に観測を行い衛星からの電波到達の差を解析する事で、受信機間の相対的な位置関係を求めます。観測点を動かず比較的長い時間で精度良く基線長の観測を行うのがスタティック測位で、短時間で観測点を移動しながら行うのがキネマティック測位とよばれています。DGPSは既知点で得られた単独測位の補正量を使うことで単独測位の精度を上げる測位方法です。単独測位とDGPSはカーナビ等に使われており、干渉測位は精密測量で用いられています。


GPSの観測方法
 
GPSの観測方法
[
 単独測位
        (コード観測) (リアルタイム)
 相対測位
[
 DGPS
    (コード観測) (リアルタイム)
     
 干渉測位
[
 スタティック測位 (位相観測) (後処理)
           キネマティック測位 (位相観測) (リアルタイム、後処理)
 


 
  GPSによる位置の決定精度
 
GPSによる位置の決定精度はその測位方法、受信機の種類、衛星の軌道情報の質などによって大きく変わります。2000年5月のSA解除(軍事的理由により意図的にGPS信号を劣化することを中止)により、現在単独測位では10m〜20m、DGPSでは1m程度の測位精度が得られています。またキネマティック測位では水平位置で数cmレベル、放送暦を使うスタティック測位では、短距離の1周波受信機観測で、、2周波受信機による10km程度の観測で程度の基線長精度が一般的です。地殻変動観測等長時間のスタティック測位で、精密暦を使う場合はレベルの解析も行われています。


 
  単独測位の原理
 
GPS衛星の電波には時刻マークがつけられているため、地上の受信機でこれを受信し、その時刻を記録すれば電波が衛星を発してから地上に到達するまでに要した時間が分かります。これに電波の伝播速度を乗じれば衛星から受信機までの距離が得られます。即ち距離測定を行ったことに相当します。このようにして測定された距離をRとすると、これと受信機の位置(X,Y,Z)との間には次の関係があります。

 
ここでX1、Y1、Z1は衛星の位置、Cは電波伝播速度で軌道情報などから分かっています。dtは受信機の時計誤差です。この式では未知数は受信点の位置と時計の誤差の計4つとなります。同様の測定を同時に4つの衛星に対して行うと式が4つできることになり、これを解くと受信点の位置に併せて受信機の時計の誤差を知ることができます。このように、単独測位では少なくとも4つの衛星の電波を同時に受信する事が必要です。


 
  信号が到達するまでに要した時間の求め方
 
GPS衛星から送られてくる電波は、C/AコードあるいはPコードという擬似雑音(PRN:Pseudo Random Noise)コードで変調されています。利用者の受信機内部では、この変調に使われているPRNコードと同じパターンのコード(レプリカ)が作られており、衛星から送られてくるコードと比べられます。レプリカ発生のタイミングを調整することで、レプリカと衛星からのコードが重なり同調するのに必要な時差を求めます。この時差が受信機内部の時計誤差を別にして、衛星からの電波が受信機に到達するまでの時間に相当します。


 
  衛星の配置と精度の関係
 
単独測位の場合最低4個の衛星の電波を同時に受信することが必要ですが、では4個の衛星を同じ股間受信しさえすればいつでも同程度の精度が得られるかと言えばそうではありません。例えば、4個の衛星がほぼ同じ場所に固まっていれば結局1個の衛星しかないのと大差なくなるため、測位精度は極端に悪くなります。これから衛星がどのように分布しているかによって測位精度が変化することが分かります。衛星が天空に均等に分布していれば最も精度がよくなるであろうことは容易に想像がつきますが、これを定量的に評価する方法があります。DOP(Dilution of Precision)と呼ばれる量がそれで受信点の位置を決めるという立場から受信点と衛星によってできる立体図形の強さを表します。通常の測量でも図形の強さを表す量がありますが、これをGPSによる単独測位法に応用したものと考えてよいでしょう。


 
  GPSの誤差源について
 
GPS測位の誤差源は時計誤差、軌道の誤差、電離層による誤差などがあります。GPS衛星が搭載している原子時計や受信機の時計にdTの誤差があると衛星-受信機間の測定距離は(光速度)XdTの誤差を含むことになります。(dTが1×秒で30cm)。従って単独測位法の測位結果は直接この影響を受けます。次に、衛星-受信機間の距離測定が完全に正確に行われたとしても、衛星の軌道が不正確であれば、これに基づいて決めた受信機の位置も誤差をもつことになります。これらの2つの誤差源は、複数の衛星を受信することにより大部分が消去されます。電離層による誤差は衛星の電波が電離層を通過する際にその速度が変化するため、衛星-受信機間の距離の見積りに誤差が生じます。この他にも水蒸気による遅延、アンテナによる誤差などがあります。


 
  電離層の影響の取り除きについて
 
GPS衛星から地上に送り出された電波は途中で電離層を通過しますが、この際伝播速度は変化し、従って地上の受信機に到達する時刻が変化します。このため、衛星と受信機の間の距離があたかも変化するように観測されます。この変化は数10cmにもなるため受信点によって電離層の状態が異なると測位結果は重大な影響を与えます。一般にこの影響は電波の周波数によって変化しその2乗に反比例します。GPS衛星は異なった2つの周波数の電波(L1、L2)を発射しているため、2波とも受信して一定の重みで加えると電離層の影響を取り除くことができます。


 
  干渉測位の原理
 
GPS衛星の電波は搬送波を擬似雑音符号で変調したものですが搬送波自体は正弦波で波長はL1、L2の各々が約19cm、24cmです。L1についてある瞬間の衛星と受信点の間の距離Rは、R=nλ+(Ф/2π)×λ+CdT+Cdtで表されます。ここではnは整数、λはL1の波長、Фは位相、Cは光速度、dTとdtは各々衛星と受信機の時計の誤差です。また、Rは、受信機の座標の関数です。単独測位では直接衛星と受信機の間の距離が測られましたが干渉測位では位相Фが測定されます。測位計算の段階になると位相の差が計算されます。1つの衛星に対する2つの受信機の位相の差を一重差と呼びます。これとは別の衛星に対して同様の一重差をつくり2つの一重差のさらに差を計算することができます。これを二重差と呼びます。干渉測位では二重差を観測値として解くのが一般的です。位相差を求めるのは、衛星までの距離の差を求めていることに相当します。


 
  位相差の求め方
 
GPSの電波は擬似雑音符号で変調されていますから、L1波についてはまずC/Aコードを使って搬送波を再現します。L2波については、コードが秘匿されているので少し複雑な技術が用いられます。再現された搬送波はそのままでは周波数が高すぎるため、受信機内の局部発信機で造られる基準周波信号を用いて周波数を低くします。このようにして得られた低い周波数の正弦波に対して、決められた時間間隔で位相測定が行われます。この測定は指定された全ての衛星について行われます。位相データは別の点で同じように記録された位相データと合わされ、コンピュータにより一重差、二重差が計算されます。場合によってはさらに一定時間離れた二重差の差即ち三重差を計算することもあります。


 
  距離の差をとるとどのようなメリットがあるか
 
2つの受信機で同じ衛星に対して距離(位相測定)を行うと測定値の中に含まれる誤差の軌道誤差と衛星の原子時計による誤差は両者で等量になります。従って2つの距離測定の差即ち一重差をとると衛星に起因する軌道・時計の誤差が自動的に消去されます。但し、受信機の時計の誤差は消去されていません。衛星の数を2つに増やすと2つの一重差が得られますが、各々の中には受信機の時計に起因する誤差が等量ずつ含まれています。これは一重差の差即ち、二重差をとることによって消去されます。このように、二重差をとると、位相の中に含まれていた未知の軌道の誤差の大部分と時計の誤差が自動的に消えてしまいます。位相の測定だけでは波長の整数倍分の不確定があって全体の距離がわかりません。これを整数値バイアスと呼びます。一定時間間隔を置いた二重差の差即ち三重差を取りますとこれを消去することができます。


 
  整数値バイアスで基線が決まらない場合の解決方法
 
二重位相差に含まれる波長の整数倍の不確定さ(整数値バイアス)を解くことは干渉測位技術の中心課題といってもよく様々な手法が試みられています。二重位相差は、衛星と観測点の間の位置関係で決まるので、その観測方程式には衛星の位置座標、観測点の位置座標、
観測位相差、整数値バイアス等が含まれています。この中で未知数なのは未知観測点の位置座標と衛星の組み合わせごとにできる整数値バイアスです。そこで観測を長時間行なって、未知数の数を上回る観測方程式を作り、最小二乗法で未知点座標とバイアスを確定しています。
短時間の観測でバイアスを求めるための手法も開発されています。ソフトウエア上で搬送波を合成して例えばL1−L2(波長86.3cm)や
L1+L2(波長10.7cm) といった仮想的な搬送波で解き、整数値バイアスの範囲を絞り込む方法や、衛星の組み合わせを変えて解き、バイアスを絞り込んでいく方法も試みされています。最近ではこれらを組み合わせて高速にバイアスを決定する方法が開発されています。
  サイクルスリップとは

GPSの観測では衛星電波を連続して受信して次々に位相測定を行ないます。これは、受信点と衛星との間の距離の変化を連続して測っていることになります。この途中で一時的に受信信号が中断すると、その前後でデータの関連性が断ち切られてしまい、
位相データは搬送波の整数倍分のギャップを生じます。このことをサイクルスリップが発生したといいます。サイクルスリップの原因としては、衛星以外の電波源から雑音、衛星が障害物などの陰に入ることによる電波の中断、建物 などによる反射波の影響などがあります。正しい測位解を求めるためには、あらかじめ位相データからサイクルスリップを取り除いておく必要があります。
幸い、サイクルスリップによるギャップの量は搬送波の波長の整数倍ということが分かっていますから、これを利用して中断が起こった時点以降の位相データに波長の整数倍を加えてデータが連続するようにします。市販のソフトウエアは自動的に行ないます。
  GPSの測量とは

GPSによる測量も通常の測量と同じく計画、選点、観測、計算という流れで行なわれています。
スタティック測量の場合を例に説明すると、まず測量作業の目的、精度にあわせて使用する受信機の種類、台数、使用する既知基準点、求める未知点等を測量作業規定等に基づいて決めています。次に実際に現地で既知点、未知点上でGPS観測ができる上空視界がひらけているか、マルチパスと呼ばれるGPS電波の反射波による干渉をあたえる人工物がまわりにないか等の確認をする選点作業を行ないます。
網の形、観測時間、その時間帯の衛星数、PDOP等の確認して一連の観測計画(セッション計画)を作り、実際の観測に入ります。
観測はほぼ自動で行なわれます。終了後は、受信機付属の解析プログラムで基線解析、網平均を行い未知点座標を決め、標高については国土地理院のジオイドモデル等を利用して最終成果を求めます。


                                GPS測量のフロー


     計  画
使用機器の検定    ↓
    踏査・選点
       ↓
     埋  標
       ↓
     観  測
       ↓
     現 地 計 算
       ↓
     計算(平均計算)
       ↓
   成果検定  成果等の整理
     
 ◆ GPSの利用方法

DGPS(Differential GPS)では、位置が正確に分かっている基準局で行われる観測から、GPS単独測位の誤差を求め、それを単独測位の補正値(擬似距離の補正値と呼ばれるもの)として利用し、測位制度を改善します。補正値は無線や衛星回線等様々な伝送手段を通じてユーザーに送られます。現在ラジオビーコンを使った海上保安庁のDGPSシステムや民間衛星を経由するDGPSシステムが船舶航行に利用されたり、FM放送を利用したり民間のDGPSサービスが主にカーナビゲーション用に利用されたりしています
 ◆ RTKについて

これまでのRTK測位は、参照する基準点からの距離が長距離になる場合、電離層の影響等で精度が低下し使用が制限されます。仮想基準点方式では参照する基準点を複数用意し、それらのデータを用いて利用者のごく近傍に参照基準があるかのような状態をソフトウェア的に作り出します。この仮想的な参照基準点を利用して相対測位行うことになり、実際の参照基準点の場所は遠くても広域で精度の高い測位が行えます。仮想基準点方式ははじめドイツの二つの会社で、それぞれ独立に開発され、手法の違いからそれぞれVRS方式、FKP方式と呼ばれています。他にカナダの大学や日本の測量機器会社でも開発されています。
  仮想基準点方式のシステム

参照する基準点として国土地理院の電子基準点を利用します。電子基準点は原理的には3点あればできますが、実際にはもっとたくさんの電子基準点が使われます。
計算センターでは、電子基準点の観測データを基に仮想基準点で観測されるであろう搬送波位相と擬似距離等の仮想観測データを利用者が利用できるようにします。
VRS方式では利用者からの単独測位結果の通信に基づいて計算センターで仮想観測データ作成し利用者に返信します。(往復通信)。
FKP方式では計算センターからこの地域のすべての利用者に共通なあるパラメーターを利用者に送り、利用者はそれをもとに仮想観測データを作成します。(片道通信)。
  電子基準点のGPS測量の利用方法

電子基準点は国土地理院が全国に設置しているGPSの連続測点です。24時間GPS衛星からの信号電波を受信し、そのデータを集めています。集められたデータは、全国の地殻変動を調べるために解析されて各電子基準点の位置座標が詳しく追跡されています。また、GPS測量の基準点データとして使えるように、観測データ特に位相観測データは、ファイル化されて各電子基準点毎に国土地理院のホームページ上に公開されています。GPS測量しようとする時、既知点での観測値として国土地理院からダウンロードした最奇の電子基準点観測データを使うことができます。平成14年からは電子基準点のリアルタイムデータについても公開されるようになり、電子基準点を利用したリアルタイム測位もできるようになりました。リアルタイムデータは、配信機関である日本測量協会から位置情報サービス事業者を通して利用できるようになっています。

国土地理院電子基準点データ     http://terras.gsi.go.jp/inet_NEW/index.html
日本測量協会               http://www.jsurvey.jp/
  外国の電子基準点のシステムについて

GPSを連続的に観測する電子基準点網のようなネットワークは、世界中にたくさんあり、その目的は様々です。IGS(国際GPS事業)のネットワークは、GPS衛星の精密軌道を決定するためのグローバルなネットワークですし、測地座標系の基準を与える国レベルのネットワークとしては、米国測地局(NGS)のCORSやヨーロッパのEUREFが知られています。また地震や地殻変動の研究のために設けられたカリフォルニアのSCIGNといった地域レベルのネットワークもたくさん稼動しています。
  GPSに使われている座標系について

GPS衛星の軌道やそれから得られる地上の位置を表す座標系として、現在WGS−84(World Geodetic System 1984)という座標系が使われています。地球の重心に中心を持つ地心座標系は、人工衛星の観測が行なわれるようになって初めて実現に構築できるようになり、米国DMA(国防地図局)で、1960年代からWGS60、WGS−66、WGS−72というように改良が重ねられてきました。WGS−84は1984年に約1500点の人工衛星観測点の座標をもとに構築されたもので、1987年からGPSのための座標系として使われています。その後1990年代に2回、その精度を更に高める更新をし、ITRFと呼ばれる国際的な地心座標系に非常に近い座標系になりましたが、名前はWGS−84のまま使っています。
  GPSで使われている座標系(WGS−84)と日本の測地座標系との違い

日本の測地座標系は、平成14年4月から地球重心に中心を持つ新しい座標系に切り替わりました。この座標系はITRF系(国際地球基準座関によって構築された座標系です。IERSは、高密度な地上位置座標を必要とする科学活動を支援するため、GPS、VLBI、SLR等の宇宙測地観測結果をもとに1988年にその最初の座標系ITRF88を実現しました。以来この座標系は毎年あるいは数年毎に更新されています。
日本測地座標系はそのうちITRF94に基づき構築されました。同時に座標系に付属する準拠楕円体についても明治以来のベッセル楕円体からIAG(国際測地学協会)の決めたGRS80と言う楕円体に変更しました。このように日本の測地系GPSの基準系は、座標系がITRF94とWGS−84、準拠楕円体がGRS80とWGS−84楕円体というようにそれぞれ定義が違ってきますが、原点位置、座標軸方向、楕円体等その差は僅かで実用上は同一と見なして差し支えありません。

                           GPS座標系と日本測地系
    GPSの基準系 日本の測地系
機関 DMA ※1 IERS
座標系 WGS−84 ITRF94
準拠楕円体  WGS−84

 a=6378137.0m

 f=1/298.257223563
 GRS80

 a=6378137.0m

 f=1/298.257222101 ※2

      ※1・現在はNIMA(国立画像地図局)
      ※2・扁平率に見られる違いは、地上の位置座標の計算の際、実用上無視できる影響しか及ぼさない。
  GPSで求めた高さと、一般に用いられている高さの違い

GPSの軌道はWGS−84座標系を基準にしていますから、これを基にして決めた点の高さもまた同じ座標点に基づいています。即ち、GPSで求めた高さとは、WGS−84が採用している基準の楕円体表面からの幾何学的な高さということになります。これに対して一般に用いられている高さは、水準測量又はこれと等価な測量によって決められています。水準測量は東京湾の平均海水面を基準にして行われていますがこの平均海水面を全国に広げさらに陸の中までも延長すると滑らかな凹凸をもった1つの局面が得られます。これをジオイドと呼びます。
従って、一般に用いられる高さとは楕円体からの高さではなくジオイドからの高さです。以上より、基準面が異なることからGPSによる高さと我々が日常使用している高さは一般に異なります。その差はその点における楕円形とジオイドの距離に相対しているためジオイド高と呼ばれます。
  ジオイド高の求め方

ジオイドは地球をとりまく平均的な海水面に近い形をしています。ジオイドの形は地球上の重力の分布によって決まるので、地上での重力観測や人工衛星の軌道解析等からその形状を明らかにすることができます。日本のように水準点がたくさんあるところでは、水準点上でGPS観測を行い得られた楕円体高と水準点標高の差を取ることでジオイド高を直接求めることもできます。GPS観測値等を使って求めた「日本のジオイド2000」が公表されています。GPS測量の成果計算に必要な楕円体高と標高との変換はこの「日本のジオイド2000」を使うことで簡単に行えます。
国土地理院ジオイドデータ :http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/geoid/
  GPS以外の新しい衛星測位システムの動きについて

欧州連合(EU)と欧州宇宙機関(ESA)は、新しい衛星測位システム(ガリレオ)の計画を進めています。ガリレオは2008年から運用開始をめざし、現在開発中でその予算総額は約5,000億円と見積もられています。最終的には30基の衛星を高度約2万3千キロの位置上空に打ち上げ、自動車、船舶、航空機の安全航行や資源開発、都市整備計画等に幅広く利用する予定です。現在のGPSやロシアのGLONASSが軍により管理されていることとは違い、ガリレオの特徴のひとつは、民間専用のシステムを目指し、欧州のイニシアティブで2世紀の情報技術革新をもたらす計画と考えられています。2003年には中国の参加がEUにより認めらえています。一方日本では、GPSを補完する測位システムである準天頂衛星システムの計画が進められています。これは日本付近で常に天頂方向に1機の衛星が見えるように配置する衛星システムで、これにより、GPSの弱点であったビル影や山間地での移動体測位を改善するものです。2010年頃の実現を目指しています。
ESA :http://www.esa.int/export/esaCP/
  GPSの将来について

1999年1月にゴア米国副大統領は新しいGPS近代化政策を決定し発表しました。それによると世界中の民間、商用、科学分野へのサービスを強化するために、将来のGPS衛星に新しい民生信号と周波数を追加することにしています。新しい民生信号は、
L2(1227.6MHZ)周波数にC/Aタイプのコード(L2C)を付け加えるもので、新しい周波数は、L5(1176.45MHZ)周波数の導入です。L2Cは2004年から打ち上げのブロックUR−Mと呼ばれるGPS衛星から、また2006年から打ち上げ予定ブロックUFからは、L2CとL5両方が搭載される予定です。さらに2010年からはこれらの機能を持ち更に改良されたブロックUと呼ばれる次世代GPS衛星に順次置き換えられていく予定です。
民生信号と周波数が増えることにより、GPSの測位機能は今後大きく改善され、例えば単独測位で現在のDGPSに匹敵するメートルオーダーの精度が実現できるようになるとか、RTKやスタテイック測位でもバイアス決定等の改善を通じてその精度、機能性の高度が期待されます。
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